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東京高等裁判所 昭和60年(行ケ)152号 判決 1985年11月27日

請求の原因一ないし三、四、2は当事者間に争いがない。この事実によれば、審決が本件類似意匠について意匠法一七条四号を適用し、これを無効としたことは誤りというほかない。

よつて審決の取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。

〔編註その一〕 本件における請求原因は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告は意匠に係る物品を「新聞整理箱」とする五一五九三八号登録意匠(出願日昭和五一年五月七日、登録日昭和五四年七月三一日)の類似第二号意匠(出願日昭和五二年九月一六日、登録日昭和五五年六月二七日、以下「本件類似意匠」という。)の意匠権者であるが、被告は昭和五六年五月二〇日本件類似意匠につき登録無効の審判を請求した。特許庁はこれを昭和五六年審判第一〇三七六号事件として審理し、昭和六〇年七月一九日「本件類似意匠の登録を無効とする。」との審決をし、その謄本は同年八月一二日原告に送達された。

二 本件類似意匠の要旨

別紙(一)(意匠公報)記載のとおりである。

三 審決の理由

別紙(二)(審決謄本)記載のとおりである。

四 審決を取消すべき事由

1 審決の理由のうち第一、第二及び第三の一は認め、その余は争う。

2 原告は本件類似意匠の創作者より意匠登録を受ける権利を正当に承継してその意匠登録をした。

3 しかるに、審決は本件類似意匠登録について意匠法一七条四号に該当する事由があるものとして、これを無効としたものであるから取消を免れない。

第三 請求の原因の認否

請求の原因一ないし三、四、2は認める。

〔編註その二〕 本件に関する別紙は左のとおりである。

別紙(二)

昭和五六年審判第一〇三七六号

審決

上記当事者間の登録第五一五九三八号の類似二号意匠「新聞整理箱」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

登録第五一五九三八号意匠の類似二号登録を無効とする。

審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

第一 請求人の申立及び理由(略)

第二 被請求人の答弁(略)

第三 当審の判断

一 本件登録意匠

本件登録意匠は、本意匠を意匠登録第五一五九三八号意匠とする類似意匠登録願として昭和五二年九月一六日に出願し、同五五年六月二七日付で類似意匠の意匠登録を受けたものであつて、原簿の記載及び図面等の全体から、意匠に係る物品を「新聞整理箱」とし、意匠に係る形態を図面等により現したとおりにしたと認められるものであり、その全体としての構成態様を別紙第一に示すとおりにしたものと認める。

二 甲号意匠

甲号意匠は、甲第五号証の刊行物に掲載されたものであり、その刊行物は、甲各号証の記載全体から、昭和五二年八月三一日以前に東京都品川区西五反田七―二二―一七所在・新輝合成株式会社が発行した広告紙「トンボ販売店ニユース」八月号“Good Living 五二―七版”新製品新聞ストツカーの御案内であつて、その中央及び下方に写真版等により現した“トンボ新聞ストツカー”を掲載したと認められるものである。

そして、甲号意匠は、同紙の記載及び写真版等の全体から、意匠に係る物品を「新聞整理箱」とし、意匠に係る形態を写真版等により現したとおりにしたと認められるものであり、また、甲号意匠は、前記の甲二号意匠を実施したものと認められ、甲号意匠を図面等により現したものが甲二号意匠ということができるものであり、その全体としての構成態様を別紙第二に示すとおりにしたものと認める。

三 両意匠の対比考量

両意匠は、意匠に係る物品について、使用目的が一致しているものであり、その意匠に係る形態についても、全体の基本的な構成態様が一致しているものと認められ、更に、全体を構成する各部の具体的な構成態様に於いてもひも通し溝の形状や取り出し部とひも出し部間の帯状面の形状まで一致したものにしたこと。

一方、本件登録意匠の出願前、本件登録意匠と同一の創作者によつて創作された意匠として本意匠及び類似第一号意匠、また、意匠登録第五一五九三九号意匠、同第五一五九四〇号意匠及び同第五一五九四一号意匠等が存在しているが、それらの意匠は、その意匠に係る形態について、各部の具体的な構成態様に於ける長手側及び短手側、更に、ひも通し溝や取り出し部下方の帯状面等につき、それぞれ本件登録意匠又は甲号意匠と同一にした又はほぼ同一にしたと認められるものが存在しないこと等から、本意匠を創作したとき本件登録意匠まで創作をしたと認められないものであり、本件登録意匠は、その出願前、意匠に係る物品を同一とした意匠の属する分野に於いて公然知られていた甲号意匠に基づき、殆どそのまま図面等により現して出願したものといわざるを得ない。

以上のとおり本件登録意匠は、甲号意匠と意匠に係る物品が一致しており、意匠に係る形態についても上記のとおり一致していると認められ、その全体の具体的な構成態様が殆ど一致していると認められるものであり、全体として甲号意匠と同一性の範囲内のものということができる。

五 むすび

従つて、本件登録意匠の意匠登録は、意匠法第一七条第四号の規定に該当する出願についてなされたものであるから、その登録を無効にすべきものとする。

よつて、結論のとおり審決する。

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